ギターのメンテナンス・チューンアップについて

  

 ギターの弦やピックが消耗品であるように、フレットやナット、サドルも使用の頻度に応じて消耗します。これによって音のビビリや詰まり、トーンの変化が生じて、ギター本来の美しい音色も感じられなくなってしまいます。

 

 また、ネックの状態によっても弦高が変化して、ビビリを生じたり、弾きにくいギターになってしまいます。

  

 ギターは主に木で出来ていますから、四季の移り変わりによる自然的な変化も生じます。

 

 そんなギター達がそれぞれのポテンシャルを発揮できるように調整して、プレーヤーに「あー、このギターって弾きやすくて良い音するなー」と思ってもらえることが、ギターたちの幸せでもあります。

 

 ところが、ギターの調整やリペアをしようにも、楽器店やリペア専門店に持って行っても「ええっー! そんなに高いの?」と驚くほどの高額料金に尻込みして、「また、今度にしよう」とか、「その費用を新しいギターの足しにした方が良い」などとリペアを諦めてしまう方も多いようです。

 

 確かに、例えば10万円で買ったギターを78年使ってリペアに出して、フレット交換とナット、サドルの交換をして5万円?では尻込みしますよね。また、「部分的なフレットの減りで全部交換する必要があるの?」なんて疑問や「もっと安くできる方法はないの?」なんてこともイケメンの店員さんには聞き難いしね。楽器店によっては作業を全て外注してマージンを稼ぐなんてケースもありますから、注意したいですね。

  

 そこで、お財布にやさしくて、納得のいくギターメンテナンスのご紹介です。

  Acoustic Guitar Clinic (アコースティックギター・クリニック)」として始動しました。クリニックですからネックリセットなどの大がかりな手術は出来ませんので、念のため。

   

   最新のメンテナンスアルバムは http://30d.jp/jiro1125k からご覧いただけます。

 

   近年のメンテナンス写真は下記のサイトにも保存してありますので、ご覧下さい。

   Larrivee C-09 http://30d.jp/jiro1125k/451

 K.Yairi AY-65   http://30d.jp/jiro1125k/465

 ・ Martin 00028EC   http://30d.jp/jiro1h125k/438  

 ・Morris MS101HD   http://30d.jp/jiro1125k/443  

 Gibson J-160E   http://30d.jp/jiro1125k/441

  

なお、メンテナンスの際には、お気に入りの新しい弦をご用意下さい。ご指定のない場合はダダリオ・フォスファーブロンズ弦(ライトゲージ)にお取り替えします。

 

  お問い合わせは「Contact」からどうぞ。

メンテナンス事例写真

①フレットの交換

フレットの抜き取り、指板の調整・研磨、フレットのタング処理・打ち込み、フレットバランス調整、フレットエッジの整形、フレット研磨などが主な手順です。

②ナットとサドルの交換

ナットもサドルも消耗品です。

先ずはナットの作製から。

ここからはサドルの作製です。

③フレットの擦り合わせ

ギターのネックの状態は、全ての弦を張ったレギュラーチューニングの状態で、ほんの少しの順ぞりがベストと言われています。

それをチェックするには1フレットにカボをつけ14フレットを押さえて7フレットを軽く叩いて下さい。接触していれば音はしませんので、明らかに逆ぞりです。フレットと弦の間隔が0.2mm位ですとチッツ、チッツと音がしますので、これくらいが最適だと思います。カッツ、カッツという音ですと順ぞりで0.3mm以上間隔があると思います。

また、1弦側と6弦側の間隔が異なる場合はネックの捻じれが生じている場合が多いので、指板の整形が必要です。

  

擦り合わせををする場合は、先ず弦を外して、ネックのアングルをチェックして、順ぞり、逆ぞりのない真っ直ぐな状態にします。トラスロッドを回して調整します。

 

そして作業の準備です。何事も備えあれば憂いなしと申しますから、指板に傷が付かないように上と横にマスキングテープを貼ります。トップやホールもボール紙などでガードしておきます。

 

擦り合わせはサイディング・ブロックを使う方法と専用の平ヤスリなどを使う方法がありますが、今回は専用の平ヤスリなどを使う方法です。

平らになったフレットの上部を丸く削ります。これは、フレット・クラウン・ファイルという専用のヤスリです。78回こすれば丸くなります。

 

さて、ここで1フレットから23フレットまで均等に削れたかチェックします。物差しなどをフレットにあてると分かりやすいと思います。ややもすると、ローフレットやハイフレットが削れていない場合が多いので要注意です。あくまでも、全フレットを均等に削ることがポイントです。

さて、後は仕上げです。

 

私は3Mのマイクロファインという研磨剤のついたスポンジで綺麗に磨きます。細かいスチールのタワシでもいいと思います。

 

さらに、微細コンパウンドで磨けば完璧です。

 

 

総仕上げはマスキングテープなどを外して、指板をレモンオイルで磨いて完成です。

ナットと形状とテンションの関係

全面接触タイプ

ナットの溝の切り込み角度が緩い場合です。弦がナットの溝の全面に接触しています。

このタイプのギターはテンションが高くなります。

音は箱鳴り感が強調されるため、弦そのものの音色が甘く感じられます。

弦高が低く設定されたビンテージギターや手工品はこのタイプが多いようです。

②半面接触タイプ

①の全面接触タイプのナットのポスト側の溝を削るとこの形になります。

切り込みの角度は①と同じですが、接触面が少なくなります。

このタイプのギターのテンションは下がります。弦高は変わらないのにテンションが下がりますから、弾きやすいと感じます。音は箱鳴り感が薄れるため、高音が綺麗に感じます。

 

テンションが高すぎて、音も硬いと感じたら、この形状もお薦めです。

 

通常、弦高調整の次には、ナットでこの調整をすることが多いです。

③点接触タイプ

②の半面接触タイプのナットのポスト側の溝を更に削るとこの形になります。点とはいうものの、弦との接触面は1mm程度です。

 

このタイプのギターはあまりみかけませんが、テンションは高くなります。音は箱鳴り感が強く、かつ弦の音もしっかりと聞こえ、良い音のギターだねと言われそうです。ただ、ナットの消耗を考えるとお薦めできません。

サドルの形状とテンションの関係

サドルは点接触のほうがテンションは上がり、箱鳴り感も上がります。また、弦高が上がれば、テンションも上がり、箱鳴り感も上がります。

ナットとサドル形状、弦高の違い、弦の巻き数でテンションや箱鳴り感、音の輪郭が変わります。これらのバランスを上手くとることが大切です。

 

先ずは、弾きやすいことを考えると、弦高は下げたい。でも、ストロークプレイが多いから、あまりテンションは下げたくない。でも、アルペジオでも綺麗な音を出したい。ソロギターもやりたい。

 

 

残念ながら、要求を全て満たすオールマイティーなギターはありません。

➃ブリッジプレートの補修

ビンテージなギターは弦端のエンドボールがブリッジボードを削ってしまい、返しの部分がエンドピンホールから出て、音の安定感やサスティーンも損なわれるケースが多々あります。

そんな場合は、ブリッジボードを修復して、元の音を取り戻す方法が用いられます。

⑤トップ割れ補修

軽度なトップの割れでは塗装部分のみで木部に達していない場合もありますが、内部から光を通すと割れの深さもある程度判別できます。将来的なことも考えると割れの進行が進まないように内部からチップを貼って補強するようにしています。

あなたはギターの弦を緩める派?そのまま派?

日本特有の蒸し暑い夏がやって来ますね。特に梅雨時の蒸し暑さはギターにとっても最悪な環境ですね。  

アコースティックギターの弦は緩めるべきか

先日、Fb上でアコースティックギターの弦は緩める派、そのまま派なる問いかけをさせて頂いたところ、たくさんの回答を頂きました。ありがとうございます。 

 

メーカーや販売店、修理店などのHPにも様々な意見や考えが掲載されています。じゃあ、プレーヤーはどうすりゃあ良いの?と、かえって疑問が湧いてしまいますね。 

 

私の個人的な考えと対処法を書きたいと思います。 

 

その前に先ず、ギターのネックの状態を簡単にチェックする方法を紹介します。

ヘッドやブリッジ側からギターのネックを目視しても微妙な順ぞり、逆ぞりは判断できないですよね。 

 

そこで、レギュラーチューニングの状態で、1フレットにカボをつけ、14フレットを押さえて、7フレットの隙間を見て下さい。はがき1枚分 (0.2mm)の隙間位が良いと言われています。トラストロッドを回して調整しましょう。順ぞりの場合は右に、逆ぞりの場合は左に、時計の針で5分位づつネックの状態をその都度確認しながら回します。 

 

最近のギターにはロッド調整用のレンチが付属されていないものもありますが、そんな時は楽器屋さんなどで買って下さいね。 

 

この隙間0.2mmが弦を張りっぱなしでも変化しない場合やトップに膨らみが生じない場合は、そのままでも問題ないと思います。これが3ケ月~半年ほどで順ぞりになるようでしたら弦を緩めてネックのストレスを和らげてあげて下さい。ダラダラになるまで緩めなくても12音程度で良いと思います。 

 

メーカーや個人製作家のなかには「当社のギターは弦を張った状態でバランスをとっているので、長期保存、運搬時以外は緩める必要はありません。」という場合もありますが、それらのメーカーのギターがネックの反りで私のところに修理依頼が多いのは何故でしょうか。もちろん同じメーカーでも材質や構造などの違いや個体差もありますので、一概には言えませんが。 

 

弦を張ったままではネックの反り以外にもトップの膨らみ、ブリッジの剥がれ、ネックの元起きなどリペアを要するダメージが多いような気がします。 

 

特に新しいギターの場合、ダラダラに緩め過ぎて逆ぞりや捻れを生じる場合もありますが、リペアの度合いは少ないですね。 

 

楽器屋さんでは、新しいギターを扱うことから、殆どの場合、弦は12音程度下げて陳列されていますね。これも危険負担を少なくする術だと思います。 

 

毎日弾いているからと言って、ギターのチェックを怠るといつの間にか、ちょっと弾きにくくなったな、弦高が高くなった・・・と感じることもありますから、早期発見早期治療が肝心ですね。 

 

答えがあるようでないような書き方でしたが、ギターの取扱方法を記して、レンチも付属させて販売する良心的なメーカー、販売店もありますし、ホームページで説明しているメーカーもありますね。 

参考に紹介しておきます。 

 

黒澤楽器のHPより 

http://www.kurosawagakki.com/guitar_hokan.html 

 

マーチンのHPより(英文

https://www.martinguitar.com/customer-service/guitar-care/ 

 

テイラーのHPより 

https://www.taylorguitars.jp/support/management/ 

 

タカミネのHPより 

https://www.takamineguitars.co.jp/support/maintenance/maintenance01.html 

 

ヤイリのHPより 

http://www.yairi.co.jp/user/faq.html 

 

ヤマハのHPより 

https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/acoustic_guitar/maintenance/maintenance002.html 

 

ギブソン ジャパンのHPは閉鎖中(ウィキペディアより抜粋加筆

20167月にはギブソン・ジャパンの会社HPも閉鎖されており、今後日本法人が継続するのか危惧されている。201712月、東京・八重洲に設置したショールームを閉鎖し、201851日、連邦破産法の適用を裁判所に申請、楽器製造などの事業を継続しつつ、経営の立て直しを目指すそうです。